犬島
島の形

近代産業遺産の残る島 犬島

岡山南東部、宝伝の3kmほど沖に浮かぶ犬島。
宝伝港から定期船で約7分。

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観光農園「碧い空」 川東さん
瀬戸内海国立公園内にある周囲4kmほどの小さな島は、
かつて花崗岩の採石場として栄え、明治後期には銅の製錬所として隆盛を誇りました。
船が島へと近づくにつれて目に飛び込んでくるのは、近代産業遺産の象徴とも言える大きな煙突。 最盛期には2000人ほどの従業員が働いていたという煉瓦造りの工場跡など往時のままの遺構が残る製錬所跡地は、2008年に美術館として再生されました。
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現在の人口は、22世帯37名。製錬所近くの集落には人々の暮らしの中に溶け込むようにしてアーティストによる「家プロジェクト」が点在しています。 島の人たちの花や野菜を育てる様子に触発され、これからの暮らし方を提案する植物園も生まれました。 島の自然と歴史をそのまま保存したような空間のおだやかさに惹かれてまた足を運ぶ人も多いのだとか。

遺構で遥か彼方に思いを馳せ、島の暮らしを垣間見ながら、1時間ほどかけて島を一周するうちにきっと、この島の心地よさに癒されていきます。

Interview島の声

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備前犬島簡易郵便局 中村さん

備前犬島簡易郵便局 中村さん

犬島で生まれ、15歳で島外に出て、30歳の時に家業である簡易郵便局を継ぐために島に戻る。 曾祖父が犬島製錬所で働く人のための日用品店を開いて以来、代々島での生活を営んできた。 窓口業務のほか、島民から買い物を頼まれることも多いそうで「島に店がない分、いろんな役割を担っている」という。 税関協力員として不審船の監視も重要な業務。

中村さんの島での暮らしを教えてください。

海に囲まれているので釣りに行くのもすぐ。今日は仕事が終わったら釣りに行く予定です。西の端ではチヌやメバルが狙えるんですよ。
今、一番楽しいことは畑仕事ですね。海水浴場の途中にある草ぼうぼうだった空き地を広く開墾して、季節の野菜を植えています。

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犬島の魅力はなんだと思いますか?

静かで自然がいっぱいなところです。小さな島なので、島全体が一つの家族のようなもの。 私が子どもの頃で人口120人くらいだったのかな。小さい頃は、精練所跡の山でよく基地を作って遊びました。 今は平均年齢70代くらいですが、美術館スタッフとして移住してきた若い夫婦もいらっしゃいますし、子どももいるので、賑やかになって嬉しいですね。

さまざまな歴史があるのも魅力です。犬島の名は、隣の犬ノ島にある、犬の形をした巨石に由来しているんだそうです。 かつて菅原道真公が九州の太宰府に向かう際に嵐に遭遇し、犬の鳴き声に導かれて上陸した島に、自分が飼っていた犬にそっくりな石を見つけ、犬石と名付けたと言われています。 桃太郎が鬼退治の褒美として犬に島を与えたという伝説があり、その島が犬島だという説もあるそうで、昔テレビ番組の取材が来たこともあるんです。

犬島を訪れる人にメッセージをお願いします。

一周しても1時間くらいの小さな島ですが、例えば美術館の敷地内には、当時のままの姿を残した発電所跡などもありますし、 スラグと呼ばれる銅を精錬する際に出る砂を集めて作ったカラミ煉瓦を使った真っ黒な遺構を見ることもできます。

家プロジェクトは古民家を利用しているので、集落のあちこちを歩くことができますし、集落を巡るといろんな発見があると思います。 製錬所の反対側には、おかやま山陽高校の研修施設もあって、その施設を使って倉敷市の造形作家、川埜龍三さんが犬島ハウスプロジェクトを行っているんです。 備前焼でできた「犬島の島犬」という作品が展示されていますが、迫力がありますよ。

瀬戸内国際芸術祭が初めて開催された頃は、静かな島に急に人が増えたことで驚いたり戸惑ったりする島民も多かったのですが、最近ではおもてなしの体制も整ってきました。 ぜひ、ゆっくり滞在してもらって、いろんなところを散策しながら自分のお気に入りを探してほしいと思います。

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